ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる 萩原慎一郎『滑走路』 退職の一日前に胸元のペンをとられるさようならペン 山川 藍『いらっしゃい』 絶え間なく代謝のつづくコンビニで老廃物のやうに働く 熊谷 純『真夏のシアン』 これらの歌は、いずれも非正規社員の若者が作ったものだ。5年ほど前に歌集が出版され、話題になった。 単なる社会の消耗品としての自分。しかし、人間である自分。いったい、どこで人間らしさを保っていけばいいのか。 萩原慎一郎の一首は、もともと朝日新聞に投稿し、朝日歌壇賞(馬場あき子選、2015年)を獲得したものだ。非正規の青年同士が牛丼屋の席に並ぶ。「牛丼屋にて牛丼食べる」と淡々と歌われているが、このときの気持ちは察するに余りある。同じ作者の「頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく」には、その心情がもっと直截に詠まれているだろう。 山川藍の作品からは、今の日本