今年の野球殿堂入りに3氏が選ばれたが、私にはなぜか、特別表彰枠で殿堂入りした福嶋一雄氏と、体罰で自殺に追い込まれた高校生が重なって見えた。 1947年夏の甲子園大会で、旧制小倉中のエースとして九州に初の優勝旗をもたらし、その翌年には新制高校の最初の甲子園大会で連覇を達成した名投手の福嶋氏だが、それ以上に同氏の名を高めたのは、3連覇を目指した1949年の準々決勝で敗れて球場から退場する際に「甲子園の土を後ろのポケットに入れた」エピソードであった。 この大会終了後に「君のポケットに入った土にはすべてが詰まっている」と書かれた福嶋氏宛ての手紙が、大会副審判長の長浜俊三氏から届けられ、同氏は今でも「学校では教わらないものを教わった。それを人生の糧としてきた…」と、その時の感動を忘れられないと言う。 戦後間もなくの日本では柔道、剣道などの武道が進駐軍から禁止され、ひ弱であった福嶋氏は身体を鍛えるため