歴史における「アーサー像」 アーサー王が「実在した」とされる時代は、およそ5世紀末から6世紀はじめ。ただし、その時代にアーサー王が「実在した」から伝説が作られたのではなく、伝説によって、過去に遡って「存在した」ことにされた―― と、いうのが正しい。元ネタとなる人物がその頃に本当にいたのかどうかすら、現在は確証がない。 アーサーの名は、およそ1100年ごろに書かれたと思われる「ウェールズ年代記」という年代記(写本)の中に初めて登場する。写本自体は新しく、内容には神話的な付けたしもあるため、歴史的なアーサー王が実在したという一次記録にはならないが、ある程度の歴史的事実は含まれている、と、考えられている。 もう少し具体的に明しよう。 「ウェールズ年代記」には、紀元518年にバドンの丘でアーサーという名前の武将が勝利を収めたこと、紀元539年にカムランの戦いで死亡したことが記されている。写本が新し