憲法には、集団的自衛権の行使について明確な禁止規定は存在しない。それゆえ、集団的自衛権の行使を明らかに違憲と断定する根拠は見いだせない。集団的自衛権の行使禁止は政府が自らの憲法解釈によって設定したものであるから、その後に「事情の変更」が認められれば、かつての自らの解釈を変更して禁止を解除することは、法理論的に可能である(最高裁が「判例変更」を行うのと同じ)。そこで問題の焦点は、集団的自衛権行使を禁止する政府見解が出された1972年と現在との間に、解釈変更を基礎づけるような「事情の変更」が認められるかであるが、約40年の間に生じた国際情勢や軍事バランスの変化に鑑みれば、おそらく認められるだろう。政府は、新たな憲法解釈の「論理的整合性」を強弁するが(違憲説の根拠もこれである)、これが戦略的に誤りであった。「事情の変更」に基づく解釈変更であると言い切っていれば(つまり、初めから従来解釈からの断絶