名古屋市の実業家で美術品コレクターだった木村定三さん(一九一三~二〇〇三年)と遺族が名古屋・栄の愛知県美術館に寄贈した収集品に、半世紀前の将棋のタイトル戦「名人戦」などに使われた盤と駒があることが分かった。愛知県瀬戸市の中学生棋士・藤井聡太四段の活躍で火がついた将棋ブームに触発され、美術館が盤を詳しく調べたことで、「名品」に光が当たった。 将棋盤は厚さ六寸(約十八センチ)のカヤ製。東海棋界の重鎮だった故板谷四郎九段が仲介し、一九五四(昭和二十九)年に六万三千円で購入したと記録されている。大卒の国家公務員の初任給が八千七百円だったころだ。 外箱が二つあり、第十三期名人戦第四局(五四年五月)と第四期王将戦第二局(同年十二月)、第十四期名人戦第四局(五五年五月)、第十五期名人戦第四局(五六年六月)に使われたことを示す対局者の署名がある。ひときわ目を引くのは、第十三期名人戦の大山康晴名人と升田幸三