読んでいて楽しいと思えるような作品が多いわけではないが、読後、索漠とした思いの中に真実だけが持つ確かな手触りと哀しい明るさのようなものが仄見える。 イーユン・リーのデビュー短篇集。第一回フランク・オコナー国際短篇賞を受賞した、その完成度の高さに驚く。どれも読ませるが、読んでいて楽しいと感じられる作品が多いわけではない。むしろ苛酷な人生に目をそむけたくなることのほうが多いのだが、読み終わったあとの索漠とした思いの中に、真実だけが持つことのできる確かな手触りと哀しい明るさのようなものが残っているのを感じる。誰の人生にも人それぞれの秘密が潜んでいて、周りが考えるほど単純なものではない。リーの筆は、ときに厳しく、ときには優しく、人々によりそって、固い殻に覆われた外皮の奥にある核を明るみに出す。全十篇のどれも捨てがたいが、親と子の結婚観をめぐる考え方のちがいが対話を通して浮かび上がってくる作品が少な