ずいぶん前のことですが、取引慣行論の講義の中で、夜間主コースの学生さんからこんな質問を受けたことがあります。「麻薬というものは処方箋さえあれば薬局から買えますか」その人は老人の末期ケアの在宅看護に関心を持っていて、在宅患者が通院することなく、鎮痛剤としてのモルヒネを服用できるか知りたいということでした。 制度的には、できます。薬局や処方箋を出す医師に特別な資格が要りますし、処方箋にも患者の住所を書き込まねばならないなど一定の条件はありますが、基本的な仕組みは普通の医家向医薬品に似ています。そう答えると、学生さんは納得しました。 ところが、実は上の説明は大事な点を見逃している、ということを後で知りました。たまたまテレビのドキュメンタリーで見たのですが。 痛みを測る機械はありません。すべては患者さんの申告と、医師との信頼関係にかかっています。じっと我慢してしまう人も、痛みを大げさに言う人もいま