黒いハーフパンツ姿で上半身裸の大男が治療用ベッドに横たわっている。20代の松井秀喜(現38)だ。そこに短パン、Tシャツ姿の男性が覆いかぶさり、松井の四肢を抱えると、ひねりを加えながら押しては引いて圧力をかけていく。 雑居ビルの一室で、次に松井は大きな鏡の前に立った。バットを構え、大きく息を吐き、一回ずつポイントを確かめながらスイングを繰り返す。肩から二の腕、脇腹、大腿・・・・・・。松井の筋肉の動きを、男の目が鋭く追う。 「ここ、もうちょっと上げて!」 「そう! そう!」 時折、グリップの位置や踏み込むタイミングを修正されながら、松井は黙々とバットを振り込んでいく。 * 「もう少しいい選手になれたかもね・・・・・・」 日米通算507本塁打。20年に及ぶプロ生活に別れを告げ〝ゴジラ〟がユニフォームを脱いだ。引退会見で松井が語った言葉を複雑な思いで聞いた男がいる。理学療法士の市川繁之氏(56)だ