3月29日、森友事件で検察審査会が「不起訴不当」という判断を公表したのは記憶に新しい。検察の不起訴の判断はおかしいというのだから大きな反響を呼んだ。だが報道の多くは公文書改ざんに関わった元財務省理財局長の佐川宣寿氏を見出しにとった。 実際には、森友事件の本質と言える国有地値引き売却の「背任」でも不起訴不当が出ている。売却担当だった財務省近畿財務局の職員も含まれる。この職員は森友学園側から、国有地の買い取りにいくらまでなら出せるか、上限額を聞き出していた。 私はNHKの記者だった2年前、2017年(平成29年)7月、この事実をニュースで報じた。様々な関係者や捜査当局などへの取材を重ねた結果だ。ここで、あの時のさらに詳細なやりとりを初めて明らかにしたい。それはまさに「背任の決定的な場面」と呼ぶにふさわしい。 【背任の“決定的場面”】 3年前の2016年(平成28年)。日に日に春らしさが増す3月