ときどき無性に香港へ行きたくなります。おかゆと一緒に食べる「爽魚皮(魚の皮)」とか、カップヌードルカレー味を最高に美味しく仕上げたような「咖哩牛筋腩伊麺(牛バラ肉カレーそば)」とかいろいろ浮かびますが、やっぱり本命は広東料理。ひと口にそう呼んでも、実は「広州」「客家」「潮州」「順徳」の4種類に大別できます。中でもぼくが好きなのは海鮮も豊かな潮州料理。かつて東洋の魔窟(まくつ)」と呼ばれた九龍城跡地の近所に思い出のレストランがあります。そこは店内に小さな屋台があって、食材を指さすだけで望みのメニューが食べられるのです。14年前、初めて訪ねたとき注文した「金華紹菜(白菜の蒸しもの)」が旨かったのなんの。まさに「コク」深い味わいでした。 ところで、この「コク」という感覚。いざそれを正確に説明しようとするとなかなか難しいものです。龍谷大学の伏木亨先生はそれを「単一の味覚ではなく、複合的に絡み合った