聡明でかわいらしい、素敵な彼女だった。 酔狂にも俺というオッサンを選ぶくらい、独特の価値観を持つ女性だった。 おまけに脳内存在ではなく、実在しているときた。二次元相手にすら恋愛という感情を覚えることができないままぶくぶくと肥ったオッサンには過ぎた幸福であった。 三十路半ばに降って湧いたように訪れた初恋は一年と少しで消えていった。 仲違いではないし、ケンカをしようといっていたけれど、それも楽しみにしていたけれど、結局できないまま終わっていった。 わかっていたことだが、未来よりも過去が強く、彼女は聡明でやさしく、俺は弱かった。 「いつか、彼女が俺に愛想を尽かすだろう」と、非モテのオタクらしくビクビクした卑怯で惰弱な予防線をはりめぐらせ、それでも卑屈にならぬようにつとめて一年を過ごした。 それは思い返しても幸福で濃密な一年で、一人で過ごしたこの一年はただネトゲとソシャゲの数値を漫然と増やすのと同
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