「なんだこれは。みんなが私を応援している…」 初めて浴びる謎の歓声に、若干の戸惑いと溢れる喜びを胸に抱えて、11才の私は歯を食いしばって懸命にトラックを走った。 小学5年生の夏休み直前のことである。 市の陸上競技会の800メートル走に出場する選手を決めるため、放課後、出席番号順に5人ずつトラックを走らされた。 800メートルはトラック4周。ありえないくらいキツい。どんなに手足をバタつかせてもまるで前に進めなかった平泳ぎよりも嫌いな種目だった。 早く終わらせたい一心だった私は、しょっぱなからフルスロットル、5人グループのトップに躍り出た。 カッコいいトップじゃない。とにかくこの地獄を一刻も早く終わらせるためだけに必死で走った。 でも、あまりにもツラい。トラックを一周しただけであっけなく「もう限界だ…」と思った。ここはもうスピードダウンするしかないな…。 「あれ?右足にちょっと違和感あるかも…