日常的にそこにある自閉スペクトラム症について伺うところから始まって、そのスペクトラムたる所以の頻度分布について教えてもらった。さらに、サブクリニカル、診断閾下という、人口の10パーセントくらいはいそうな集団についても早期の把握と対策が大切だという話にも至った。それぞれを知ること自体が社会的な改善の第一歩につながることで、うまく伝わればよいと願う。 最後の話題として、これまでのすべてのお話の中に通底し、折に触れて何度も繰り返された大きな問題を再度取り上げたい。話は、神尾さんのキャリア初期、京都時代にさかのぼる。 「1990年代ですが、京都の児童福祉センターという行政のクリニックにいたときに、自閉症児が通う施設を巡回して訪ねました。そこで、抱っこ療法なんていうのを本当に一生懸命やっているのを見て、『何だこれは』って思ったのを今でも思い出します。そのときに先輩の先生と一緒に、70年代からイギリス