人間を描写することでは当代随一との呼び声も高い漫画家・井上雄彦が、絵の表現をさらに深化させるためにバルセロナに旅立った。範を求めたのは、サグラダ・ファミリアに代表される作品で世に知られる建築家・アントニ・ガウディだ。ガウディに惹かれたわけを井上氏に寄稿してもらった。(ケンプラッツ) ガウディに関する自分の知識は日本人の平均以上ということはなかったろう。バルセロナに行き、たくさん見聞きしてきた今も、実際のところそうは変わらない。僕は建築ど素人の一漫画家で、その世界への興味はなかった。 依頼を受けたのはいつだったかな。なぜ、何に惹かれてこの仕事を引き受けたのだったかな。 こんな、最初の動機を〆切も迫ってきた今頃になって思い起こしているのは、いまいち気持ちが乗ってこないからなのか? いや違う、その質問はインタビューで必ず聞かれるだろうことだからだ。 いやそうではなくて、僕の中のガウディ像がまだ、