ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (3)

  • 河川敷に捨てる - 傘をひらいて、空を

    彼女はアウトドア用の折りたたみ椅子に座っていた。私は彼女に会釈してコンクリートブロックに腰をおろした。そこは河川敷の中でも高い確率で複数のと遭遇できる場所だった。私はそこでさわらせてくれるをさわり、さわらせてくれないをながめてぼんやりする。その結果、気の進まない会をとりやめたこともある。 私は直前のキャンセルはすべきでないと考えており、気が進まなくても約束があれば行った。断るのはそのあとだった。けれどそのときはつくづくいやになってしまったのだ。その人のメールからは一度会っただけの私に対するよくわからない幻想が手脂みたいににじみ出ていた。 指先の動きでの気を引いて、病気になってもいいかなと私はたずねた。友だちがね、そんなの病気になっちゃえばいいんだって言うの、いいかな。は私に何の関心も示さなかった。私はなんだか安心して、申し訳ありません、風邪をひいてしまったようです、と書き送った

    河川敷に捨てる - 傘をひらいて、空を
  • 私のうつくしい老後 - 傘をひらいて、空を

    友だちとバーゲンに行って、いいだけ買い物をした。私たちはそんな日の夜、油っこいものをべながらビールをぐいぐい飲む。欲望のすべてを肯定する日、と友だちは言う。節約?ノー。ダイエット?ノー! 私たちはそれぞれが買ったサンダルの革細工やワンピースのカットワークがいかにかわいらしいかを話し、黒ビールをいきおいよく空けた。彼女があなたが好きだよねえ、服を選ぶときの三倍くらいの熱意で選んでるよ、と言うので、私はにわかに心配になり、やっぱり私はが好きすぎるよね、今はまあいいけど、年とってから箍が外れて大量のを買ってためこむようになったりしたらどうしよう、と言った。 彼女はにぎやかに笑って、そんなの全然たいしたことない、と言った。私なんか確実に他人に文句つけて歩くおばあさんになっちゃうね。だって今でもいろんなことにすぐ腹が立つから、押さえが利かなくなったら独りでぶつぶつ言いながら近所を歩き回って子

    私のうつくしい老後 - 傘をひらいて、空を
  • 善人らしい善人 - 傘をひらいて、空を

    それで彼女はどんな人だったんですか。私はパパイヤのサラダを取りわける彼の手つきを見ながら遠慮がちに訊いた。つまりその見た目とか、そういうのですね、えっと、可愛い人でしたか。 うちの会社のね、彼女より年上の部下に見せたら口をそろえて可愛いって喜びそうな感じ。よくいる感じだよ。何て言ったらいいのかな。彼は小皿を差しだしながらそう言う。彼は大皿の料理がくるとごく自然に私より先にそれを取りわける。私はどうもありがとうと言う。私が彼にできることはそのほかにない。 彼といると私は小さい子になったみたいな気がする。彼は私が少しでも困っているとすぐに見とがめて言う。たとえば、ここで荷物をあずけるといい、それはそのままにしておけば始末してもらえるから気にしてはいけない、段差があるから気をつけて、ああ魚の鰓の裏はねこんなふうにするときれいに取れるよ見ていてごらん、ここでなら大丈夫、電話がかかってきたので少し話

    善人らしい善人 - 傘をひらいて、空を
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