「誰かが言わないと変わらないと思ってるから。それで変わるなら、どう言われてもいいです」――モバイル業界の変革者はこう言って少し寂しそうに笑う。 6月26日に総務省のモバイルビジネス研究会が発表した報告書案は、業界に大きな衝撃を与えた。既存の携帯電話事業者を中心とした垂直統合型のビジネスモデルから、ユーザーが通信事業者や端末、サービスをそれぞれ選べる水平分業型のモデルへと移行させようというのだ。 このモバイルビジネス研究会を指揮した総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課長の谷脇康彦氏は、長年情報通信政策に携わり、モバイル業界のオープン化を推進してきた人物だ。今回の報告書案に対する業界からの反発の声も、当然谷脇氏の耳には入っている。 しかし研究会の狙いは既存のビジネスを壊すところにあるわけではない。ユーザーに選択肢を与え、競争を促すことでモバイル市場の活性化と拡大を図る点にある。