スピッツが武道館によく似合っていたというよりも、武道館がスピッツによく似合っていた――そんなふうに感じたライブだった。スピッツというバンドの存在感、その不思議さと大きさを改めて感じたライブだった。 客席の照明が落ち武道館の会場に観客が身に付けたビンズのライトが星空のように浮かび上がった。赤や青の小さな光が暗闇の中に点在しながら、ひとつの美しい絵になる様は、とてもスピッツらしいと思った。 バンド結成27年目で迎えた初めての武道館公演は、「ロックバンドと武道館」という化学式に期待される化学反応をするりとかわして、薄暗い物憂げなメロディの“夜を駆ける”で、水面に静かな波を起こすように始まった。そして、これ以降のセットリストが実に「スピッツらしい」セットリストだった。シングル6曲を含めてこれまでのアルバムからほぼ万遍なくピックアップしつつも、会場を埋めたファンにとって「誰もが愛する曲」という以上に