「オラニア」のゲートの前で写真に収まる白人男性 「俺は嫌だよ。レイシスト(人種差別主義者)だけが暮らす町なんて、まっぴらごめんだよ」 私が取材の趣旨を説明すると、ヨハネスブルク支局で働く黒人助手のフレディは露骨に取材出張への同行を嫌がった。好奇心旺盛な彼にしては珍しく、頑なな態度だった。 取材の訪問先は、南アフリカの中部にある「オラニア」――南アフリカでは有名な、白人だけが暮らす町である。 「なんでそんな所に行かなきゃいけないんだよ」とフレディは顔をしかめながら罵倒した。「世界で最も『チーズくさい』(白人を揶揄する際に使われる表現)町だぜ」 2015年2月、日本のある全国紙に一編のコラムが掲載された。筆者は作家の曽野綾子で、記事には「『適度な距離』保ち受け入れを」という見出しが添えられていた。 〈もう20~30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、