阿南 英明 key words:筋区画症候群,地震,腎不全,津波,Rewarmingshock,脱水,低Na血症 圧挫症候群(クラッシュ症候群)はじめに 阪神淡路大震災で370名以上の報告がなされ「クラッシュ・シンドローム」という言葉が知れ渡るようになった.長時間重量物に挟まれていた後に救助された傷病者が,数時間経て腎不全や急性循環障害(ショック)を生じて死亡する病態である.そのため,地震や戦争といった特殊な状況下での報告がほとんどであり,長く臨床医家には馴染みの薄いものだった.しかし地震災害では3~20%発生1)しうることや高層の建物では生存救助者の40%に本症が発生することが報告2)されている.災害といえば地震が代名詞である我が国の実状を考えると,この病態を知らないでは済まされない. 病態《本病態発症に至る3つの特徴》①ある程度のボリュームのある筋肉(上肢よりは下肢に発症し易い)の圧迫