安倍晋三元首相の「国葬」があす行われる。日を追うごとに反対論が広がる異様な状況下での実施となる。 銃撃事件の衝撃が冷めやらぬ中、岸田文雄首相は国会に諮ることなく閣議決定した。民主政治の手続きを欠いた対応が、国民の不信を招く結果となった。 安倍氏をなぜ国葬とするのか。最大の疑問は直前になっても解消されていない。 そもそも、明確な基準や法的根拠がないまま、政治家の国葬を実施することには問題が多い。 首相は「時の政府が総合的に判断するのが、あるべき姿だ」と強調した。これでは、恣意(しい)的な運用がまかり通ってしまう。 戦後に首相経験者の国葬が行われたのは、1967年の吉田茂元首相だけだ。その際も内閣の一存で決めたことが問題となった。 80年の大平正芳元首相以降は、政府と自民党が費用を折半する「合同葬」が主流となった。野党の理解を得る「政治の知恵」だったが、首相はその慣例をないがしろにした。安倍氏