「平気で嘘をつく人たち」には日常的に他人を、また自分も無自覚に欺いているおぞましい人々ばかりが登場するが、そのなかでも、もっともおぞましいのがある小学生の男児に関する報告である。この本の著者はカウンセラーで、自身のクリニックに託された児童のカウンセリングの様子を本書に納めているのだが、あるときそこへ自殺で兄を亡くした男の子がやってくる。男の子は慕っていた兄の自殺をきっかけに非行に走るようになったという。万引きで補導されたり、学校をさぼったりし始め、注意してもまるで改めようとしない。それまでは成績優秀な優等生だったが、成績もガタ落ちした。そこで学校は彼とその両親にカウンセリングを勧めた。突然の非行に頭を悩ませていた両親も、ぜひにとそれを快諾し、そして少年を伴い著者のクリニックに赴いた。渋々ながらもやってきた男の子は、しかし、頑なに口を噤んだ。回を重ねても彼の態度は変わらず、沈黙のカウンセリン