野坂昭如さん(作家) 1930年生まれ。自宅の庭の菜園にはこの夏、大ぶりなキュウリがたくさんぶらさがった。=妻の暘子さん撮影 ■米国にへつらう関係、今も 『抱擁家族』 [著]小島信夫 (講談社文芸文庫・1188円) 一九四五年八月十五日を機に、日本は掌(てのひら)を返したように、GHQ(連合国軍総司令部)の、いわば言いなりとなる。 ぼくは、アメリカの出版社、クノッフ社極東編集長を三島由紀夫さんに紹介され、戦後二十二年も経っていたが、アメリカにおべっかを使いへつらう気持ちと、この野郎と見返してやりたい気分のないまぜが、自分の中にあると見当つく。このないまぜを小説にしたのが、ぼくの「アメリカひじき」(『アメリカひじき・火垂るの墓』新潮文庫・562円)。 日本とアメリカの七十年の関係を知るために読むべきものは多い。 「第三の新人」でひとくくりにされている作家の中でも、銀座や新宿の文壇バァで、よく