非モテ人間は現代の被差別階級なのか? 異性を発情させるのがそんなに偉いのか? 文学を手がかりに、いっそ、非モテライフをエンジョイする方法を探っていこう! 今回のテキストは、不器用な手品青年のお話です。 とあるバラエティ番組で「飲み会で嫌いなこと」というテーマでアンケートをとったところ、「マジックを見せられること、驚きを強要されること」が一位になったそうです。興味がなくても注目してあげないわけにはいかない、そもそもどこが驚きどころなのだかわからないとイライラしてしまう人も多いらしいマジック宴会芸。マジック・ハラスメント、略してマジハラという言葉が定着するのも時間の問題かもしれません。とはいえ、手品を見せるということでしか他人と交われない、そんな器用なんだか不器用なんだかわからない人もいるのです。吉行淳之介の短編『手品師』(『純愛小説名作選』収録)に出てくるのはそういう童貞青年です。 小説家