論理実証主義/推論における演繹と帰納/経験的なテストの意味 17世紀に生まれた近代科学は,19世紀に国家や産業と結びついて制度化されましたが,それは近代科学が単に知識を探求するだけでなく,現実の問題の解決に役立つと思われたからです.17世紀の科学革命において,近代科学の知識の探求方法は,中世スコラ哲学のような純粋な思弁から,観察や実験に基づく実証へと変化し,それが現実の問題へのアプローチを可能にしたのです.そこで,観察や実験,つまり帰納的推論によって実証され得る知識こそが科学的知識であるという,コントらの実証主義の考え方が生まれました.しかし,帰納的推論は,18世紀イギリスの哲学者ヒュームによって,論理的に誤っていると断じられました.さらに,20世紀の論理実証主義者たちは,このヒュームの呪いを解き,経験される世界と科学的言語との直接的な関係性を正当化しようと努めましたが,必ずしも成功してい