大好きな「ウェストサイド・ストーリー」が鈴木を未知の世界に運んでくれた。SP11位からの浮上を期したフリー。曲がかかった。つい最近までは思いもしなかった人の顔が、重なった。 1月の四大陸選手権の後、ジャンプの感覚がずれて練習に行き詰まっていた。五輪目前の2月に入ったある日、練習を終えてファンレターを整理していたら、一通の手紙がまぎれ込んでいた。差出人はジョージ・チャキリス。映画版「ウェストサイド・ストーリー」で不良グループのリーダー役を演じ、アカデミー助演男優賞に輝いた米国の大物俳優だった。鈴木の胸が震えた。 手紙には「時がたってもこうして受け継がれていることがすごくうれしい。オリンピックでの成功を祈っています」とつづられていた。チャキリス世代の会社の上司たちは興奮のあまり、大騒ぎしていた。鈴木はしんみりと「世代も、世界も、やっている場所も全然違うのに、こうやってつながっているんだ」と