アイヌ語の「こんにちは」という言葉は、一般的には「イランカラプテ」と伝えられています。「イランカラプテ」を一語ごとに区切っていくと、「あなたの心に触れさせてください」となります。さらに細かく区切ると、kaとは表面でrapとは鳥の羽。ですから「あなたの心にそっと触れさせてね」という意味になります。 ただこの言葉をしょっちゅう使っていたのかというと、決してそうではなくて日常的には用いませんでした。 挨拶とは、行為の重さや尊さに関わっています。挨拶をする相手で、いつも一番近くにいるのが家族です。ひとつ屋根の下で暮らす夫婦や親子という関係。家を一歩外に出て発生するのが、コタン(村)のなかの隣人です。家族間やコタンのなかで、普段からちょくちょく出会ってる人に「イランカラプテ」とは言いません。もっとも身近な人に対しては、むしろ何も口に出しません。言葉として発しません。これが原則です。目礼が重要視さ