「年が明けて、新しいシーズンが迫ってくるこの時期、もっとやりたい気持ちになるかな、身体がうずくかなと思ったんですが、案外そうでもなかったですね。むしろ、まったく動きたくない。現役に未練はありません」 平本一樹、36歳。東京ヴェルディの生え抜き選手として長くプレーし、2017シーズンをもってキャリアに終止符を打った。 ピッチを去って2カ月も経っていないが、表情から険しさが消え、ずいぶんと柔和な印象になった。 「もう戦いの場から降りたんで。自然と穏やかになりますよ。いいことじゃないですか、いいこと」 そう自分に言い聞かせるように言う。引退を撤回してほしいという打診も受けたが、丁重に断った。緑のシャツ以外を着る気は起きなかった。 1990年、平本は小3から読売日本SCジュニア(現東京V)のアカデミーに入った。1993年、Jリーグ開幕。隣のグラウンドではラモス瑠偉や三浦知良といったスター選手がボー