こんな会話が耳に飛び込んできた。 「すごいの見てるんだよ。血も撮れたかも。いますぐ送るね」 「倒れてるところ見たよ。ブログに載せようか」 8日午後2時すぎ、東京・秋葉原で無差別殺傷事件が起きた直後だった。高架になっているJR秋葉原駅前の歩行者用通路に、多くの人が群がっていた。ちょうど事件現場が見通せる場所で、われ先に携帯電話をかざし、現場を撮影しようとしていた。 その多くは20代とみられる若い男女。電話で様子を伝える人もいれば、撮った写真を送信しているのだろう、画面を見ながら親指をせわしなく動かしている人たちも。ひとしきり写真を撮ると、何ごともなかったかのように、その場を立ち去っていく。 それは、妙に冷え冷えとした狂騒だった-。当時、現場の路上にいた男性会社員(36)も「(周囲の人々の様子は)興奮というより、冷めた感じで不気味だった。『自分には関係ない』という空気を強く感じた」と