『回転木馬のデッド・ヒート』の名作短編 小説の中には、若いときに読むべきものと、年を取ってからじゃないと心に響かないものがある。村上春樹の「プールサイド」という短編は後者に属すると思う。大学生の時に読んだときよりも25歳になった今読み返した方が、「プールサイド」のもつメッセージを敏感に感じ取れた。25歳にこの短編をもう一度読み返せたことは本当に幸運だ。 この短編のテーマは「人生の折り返し地点」についてだ。 「プールサイド」という小説は、『回転木馬のデッド・ヒート』という短編集に収録されている。この『回転木馬のデッド・ヒート』という短編集は少し特殊で、村上春樹自身がこの短編集に収録されている文章は小説ではないと断言している。村上春樹本人の言葉を借りれば、小説でもノン・フィクションでもない「スケッチ」だ。 『回転木馬のデッド・ヒート』に収録されている「スケッチ」の主人公たちは、限られた一定区域