「何を笑っているのだ、主君」 腕の間からアカツキが身をよじるようにしてシロエを見上げてくる。 先ほどからシロエは、喉の奥を鳴らすような音を立てて忍び笑いをもらしているのだ。 星々の間を〈鷲獅子〉(グリフォン)は風を裂き一路北東へと向かっている。この調子では、後数分もすればアキバの街は見えてくるだろう。地上を移動すれば数時間の旅路も、力強い翼を羽ばたかせる魔獣の背に乗れば二十分程度の短い距離でしかない。 「いや、傑作だと思ってさ」 「ん?」 シロエはおかしそうに笑う。 「クラスティさんのあんな顔、始めて見た。誤魔化してたけどさ。……あれは、押されてたよね。あー。すっきりした」 「主君はまだ根に持っていたのか? ……舞踏会のことを」 「そんな事はないけど。……でも、そうなのかな」 シロエは腕の中にすっぽり収まったアカツキに応える。 「それに、あのお姫様もたいしたタマだよ。あそこでああ来るとはね