あらゆる映画が再生産される時代になると、オリジナルへの思い入れなど、初めて観る観客にとっては何の意味もなさなくなる。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(以下『打ち上げ花火』)が、岩井俊二監督によるオリジナルの実写版と、今回リメイクされたアニメ版でどちらが優れているかといった比較は、大多数の観客にとっては、劇中の台詞を引用すれば、「花火なんて丸くても平べったくてもどっちでもいいじゃん」みたいなものかも知れない。とはいえ、アニメ版がオリジナル版を丁寧になぞった上で新たな物語を付け加えているだけに無視するわけにはいかない。どう脚色され、それが実写からアニメに越境する上でどう効果を挙げたのかという視点から眺めてみることにする。 最初にことわっておくと、筆者はモロにオリジナル版側の観客である。これは24年前、『ifもしも #15 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(本来、#15