存在と本質(esse-essentia) トマスは存在を無条件に認める。つまり、現実がもつ信実性を承認する。存在はただそれ自体として自立的に存在する。これが存在の根本性格であり、質や量といった偶有性は二次的に見出されるに過ぎない。トマスは当時のアリストテレス解釈から新プラトン主義やアラブ的な混入要素を取り除き、純粋なアリストテレスの存在論を求め、そしてその上で彼を乗り越えようとした。つまり、アリストテレスにおいては存在論的基本概念は「形相−質料(forma-materia)」と「現実態−可能態」であったが、それにトマスは「存在−本質(esse-essentia)」を加えた。 トマスによると「形相−質料」は主に自然世界の存在者(質量的事物res materialis)に限られるが、「現実態−可能態」は自然世界のみならず、質量を持たない形相のみの存在者(天使(知性的実体)や神(純粋現実