現代の和声学は、従来の規則論のそれと違って実証的和声学といわれる。その理由はいうまでもなく、検証や分析などの領域拡大によって、概念化できる和声の世界の範囲がほとんど和声の「歴史(原理的に理解できる事象現象)」にまで及んでいること、また理論体系の構成でも、幾多の実在を介した検証を呈示してきた相対的構造体系と、書法の理解にとって必須の実践構造の解明プロセスを私たちが獲得していることにある。 そのプロセスの起こりは、2000年とするのがもっとも適当であろう。今世紀になって初めて、古典和声に連続5度が存在していたことや、導音進行が限定されたものでないことがはっきりしたからである。そして、新しい和声学の新しい概念枠組を提供した理論構成といえば、何といっても、歴史的実践的実在の検証分析によるものである。この古典由来の歴史的な存在証明は、それ以前の規則論との決別を指し示すものであり、今後の和声学基礎論に