以前外来で患者さんから、こんな悩みを打ち明けられたことがあります。「先生からもらった痛み止め、怖くて飲めませんでした。だって『麻薬』なんですよね…?」その方は、大腸がんの腹膜播種(はしゅ)=おなかの中にがんが広がった状態=で、抗がん剤治療を受けていました。おなかの痛みをコントロールするため、私は麻薬性の鎮痛薬を処方していたのですが、患者さんはこれが「怖くて飲めなかった」と言うのです。 私は大いに反省しました。 医療用麻薬を日常的に使っているせいで、患者さんから見た「麻薬」という言葉の持つまがまがしいイメージに思いが至らなかったのです。 ◇「麻薬は怖い」という誤解 「麻薬」というと、何となく怖いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際、麻薬に対しては、「副作用が強いのではないか」「中毒(依存症)になるのではないか」といった不安を口にされる方もいます。「麻薬」という言葉は、「夢中に