家のリフォームをするので父の机を整理していると本や雑誌と共に父が生前使っていた手帳が出てきた。故人とはいえプライベートだ。僕のように抱いた女リストとか書いてあったらどうしよう…つって中身を覗くのに少し躊躇したけれど、そんなためらいより、突然何も言わずに自殺してしまった父のことを少しでも知りたいと思った。僕は父の理由を探し続けている。 手帳を開いた。まず目に止まったのは僕によく似た丸っこい字体と、あの日に近づくにつれカレンダーを埋めていた予定が歯が抜け落ちるようにして少なくなっていくことだ。フリーランスで働く苦悩、職人気質といえば聞こえがいいが悪くいえば融通のきかない父の性格が垣間見えるようで、僕は胸が苦しくなってしまう。 また思い出す。ずっと僕の心に残り続けているあの日の前夜、僕と父だけの記憶。題名は忘れたけれどもバラエティー番組にせんだみつおが出ていた。ディティールは忘れてしまったけれど