ウェルシュ菌はセレウス菌と同様に菌体内に芽胞を形成する細菌で、土壌の常在細菌であるし、健康者も腸管内に常在する細菌です。しかし、常在ウェルシュ菌とは異なる特殊な性状を獲得したウェルシュ菌が食中毒を起こします。加熱でも死滅しない芽胞を持つ細菌であるので、加熱調理した食品が原因食品となります。ウェルシュ菌は酸素がある環境では増殖できない偏性嫌気性の細菌であり、酸素に暴露されると徐々に死滅してきますが、芽胞は酸素に暴露しても死滅しません。 ウェルシュ菌食中毒はわが国では1983年から食中毒統計に計上され、図1のごとく毎年約25件の発生件数(患者数が約2,500名)報告されています。大量に調理するところで発生し、1事件に占める患者数が多く、給食病とも呼ばれます。ウェルシュ菌の食品衛生学的特徴と食中毒の起こり方について紹介します。 1.食中毒起病性ウェルシュ菌の特徴 1)芽胞の耐熱性が高い 古くより