2012年03月03日18:02 カテゴリ本 意志と表象としての世界 アマゾンで、ショーペンハウアーの『幸福について』がベストセラーの第1位になっていて驚いた。テレビ番組で紹介されたのがきっかけらしいが、この人生論を読んでもショーペンハウアーはわからない。彼の主著は本書で、ペーパーバックでも出ている。 近代の初めから人々を悩ませてきたのは、死の恐怖だった。それは人々が共同体から離れて個人として生きる近代社会の宿痾ともいうべきもので、モンテーニュもパスカルもこれを論理的に解決できなかった。ショーペンハウアーは、本書でそれを解決する「賢者の石」を見出したと書いている。 彼が世界の根本的な実在だと考える意志は、カントの「物自体」に似た普遍的存在だが、合理的に認識される客観的対象ではなく、それ自体が世界を動かすエネルギーである。意志は客観的な表象として現われるが、これはカントのいうように個人の意識