本を電子化するしないで大騒ぎ。紙で刷るのは資源のムダだ、いや出版社こそが本の質を作っている、うんぬん。しかし、電子化してまで、なんで本じゃなきゃいけないんだ? 人間の思考はメディアが規定する、と、マクルーハンは言う。人間の思考があって、それをメディアに載せているのではなく、人間は、メディアに合わせてしか思考できない。声の時代には歌を唱い、文字ができたら石に年号を刻む。本も、最初は木片か竹棒に、先生の御言葉を書き付けただけ。それが糸で綴じられ、紙で巻物になると、やたら行間や周辺に注釈を書き込みたがるようになる。印刷の初期には、「パンフレット」として独特の紋切り型の世界観が生まれて、それがフランス革命を引き起こし、その後は、パンフレットと定期郵便と自家製本の制度が一緒になって、やたら大河な「超長編小説(ロマン)」がはやった。 さて、現代の我々の思考は、二十世紀の初等教育とザラ紙雑誌でできている