反撃する能力を持ちながら、今のままではその力を生かす道はない。だが、サイバー攻撃が急激に巧妙化し、破壊力を増す中で、世界は既に、安全保障上の新たな脅威として対策に動き出している。「このままでは世界から取り残される。日本全体で正面から議論してほしい」。省内部からも悲痛な声が漏れる。 「法的な問題を置き去りにしたまま技術開発を進めても意味がない。一刻も早く位置づけを明確にしないと日本だけが後れをとる」。開発計画に関わった同省幹部は焦りをにじませる。 米国は2011年、「サイバー攻撃には軍事を含むあらゆる手段で反撃する」との方針を公表、同じ年にはサイバー空間を「軍事作戦領域」と位置づけるとも表明した。組織作りも着々と進め、国防総省の下にサイバー作戦を統括する部隊「サイバーコマンド」を創設、10年11月から本格運用を開始している。北大西洋条約機構(NATO)も近く、サイバー戦についての新たな考え方