とにかく、単純計算で、これまでに、冲方の四十倍の仕事量をしてのけてきた方です。普通はできません。ありえません。富野監督が二十代のとき、上にいたのが手塚治虫です。基準と経験値の絶対量が違いすぎます。それ以外にも、アニメ業界で原作小説という概念をもたらすなど、仕事そのものを創造したりと、監督が果たしてきたことがらの規模をあらためて実感。ただ圧倒されました。 文芸賞をいただいて浮かれていた気分を、かけらも残さず吹き飛ばして下さいました。 『リーンの翼』のゲラ原稿である。総重量、三キロ強。「三校」「念(四)校」の文字が恐ろしい。本当に、いったいどれだけ手を抜かないんだ。ただ読むだけでも学ぶことが多すぎて、付箋シールが何束あっても足りません。 「二十人くらいの社員が何も言われず、背広とネクタイ着用で並び始めた」 野性時代担当。富野監督の到来の光景に唖然となって。 「緊張による眼圧でコンタクトが外れる