ケインズ理論の復権 私の学生時代には、ケインズ理論が大学で熱心に教え られていた。当時は教科書にある流動性の罠の考え方を 一生懸命に理解しようとしたものだ。しかし、それから 20年近く、流動性の罠もデフレも現実の世界で経験する ことはなかった。教科書の世界のケインズ経済学と現実 の経済の間には大きなギャップがあったのだ。 ところが、1990年代の後半、日本経済にとってはデフ レと流動性の罠が、マクロ経済政策上の最大の関心事と なったのだ。それでも90年代は日本だけの特殊な出来事 と見られていたが、今回の世界的同時不況で、ケインズ 理論は政策論議の最前線に躍り出てきた。世界の多くの 国にとって、 「ケインズが考えた世界」は何十年も経験 したことのないものであった。これまで経験のない大胆 な財政政策と金融政策のアクセルをどこまで踏み込むの かが大きな問題となった。この号でも、専門家の方々が そ