探偵小説『ロング・グッドバイ』について解説する。本稿ではハヤカワ文庫の村上春樹訳を参照している。 三人の医者を評価するマーロウ 主人公である私立探偵のフィリップ・マーロウは、作中において三人の医者に会いに行く。彼らの内のいずれかが、捜索を依頼されたロジャー・ウェイドという作家をかくまっている疑いが強かったからだ。 マーロウは順にヴェリンジャー、ヴュカニック、ヴァーリーという名の医者を訪ねる。この中でもっとも文章量が割かれているのはヴェリンジャーである。三人に与えられたページ数を順に挙げていくと、14P、9P、6Pとなる。その後マーロウは再びヴェリンジャーを訪ねてウェイドを見つけ出すのだが、ヴュカニックとヴァーリーはその後まったく登場して来ない上に、そこを訪ねて行った結果何らの手がかりを見つける訳でもないので、この二人を訪ねるシーンはまったくの無駄であるように思われる。 しかし本当は意味があ