いったい、なんの利益があるのかわからないが、妙な使命感を持った主張が止まらない人は絶えることがない。 でも、それを目にするたびに、とても平和な世の中であることに安堵するのだ。そりゃそうだ、どんなに主張が対立しても、相手が徒党を組んで攻めてくる、あるいは斬り合いとか撃ち合いが始まるなんてことは、そうそうない。 中国の春秋戦国時代とか、さまざまな説客が入り乱れたわけだけど、一言でも言い間違えたり、言葉に詰まれば首を斬られたり、釜ゆでにされたり。ああ、日本でも江戸時代以前は、そんな感じだ。そう考えると、とても平和だ。 さてさて、そんな平和な時代でも、やっぱり緊張感は必要。時には、肉体言語で言論の自由を振りかざす人がいないとは限らないからだ。 そう、この『I SHOT ANDY WARHOL―ポップカルト・ブック』(早川書房)のヒロインであるヴァレリー・ソラナスのようにね。この本は1996年の映画