「彼女と別れようと思うんです」 タツミは長いまつげを震わせ、絞り出すような声で言った。 「まあ待て。落ち着け」 マルトは読んでいたレポートを閉じ、スレートを畳んでポケットに入れた。 「どうしたんだ。アケミちゃんとはうまくやっているんだろう」 「……」 タツミは顔を伏せる。 「おいおい。昨日だって、あんなに仲良しだったじゃないか」 はぁ、とマルトはため息をつく。耳の下をとんとん、とたたいて秘書AIを呼ぶ。 (タツミとアケミちゃん、なんかあったのか?) (アケミのメモリーログを確認。異常は検出されていません) (となるとタツミが何か誤解したいつものパターンだな。よし) 秘書AIとの会話を切って、マルトはタツミに聞く。 「おまえ、彼女がPロイドだから別れるってんじゃないだろうな」 「そんなことはしません! 生まれがPロイドだとしても、彼女は素晴らしい女性です」 Pロイド、パーソナルドロイドは人間