※本記事は、『セカンドアフター臨時増刊号 日常系アニメのソフト・コア』(2014)所収の志津A「日常系アニメにおける視点間の差異──アニメ『けいおん!』について」を全面改稿したものです。 The Comedy of Being Born: K-ON! and the Critical Point of Slice-of-Life Anime|SHIZU Ayahiko 文:志津史比古 一般論の王国から 村上春樹は、『国境の南、太陽の西』(1992)の中で、ひとりっ子の主人公に「自分にもし兄弟がいたら」という空想を思い描かせている。いや、正確に言うならば、そうした反実仮想が繰り広げられそうになる瞬間に、それを制止させている。主人公は、母親から尋ねられたときに、次のような返答をしたという。 僕の答えはとても長い答えだった。そして僕はそれを要領よく正確に表現することができなかった。でも僕が言いた