京の都には、葵という名の貴族の娘がいました。 彼女はその美しさで知られ、多くの詩人が彼女を詠んだ歌を残しています。 しかし、葵には誰にも言えない秘密がありました。 彼女の十二単衣は、ただの衣ではなく、古の魔法で織り込まれた特別なものだったのです。 その衣を纏うと、心の中で願うことが叶うという不思議な力を持っていました。 しかし、その力は大きな代償を要求するものでした。 ある春の日、桜が満開の下、葵は皇子の行列を見かけました。 皇子の優雅な姿と慈悲深い眼差しに心を奪われた葵は、彼の愛を得るためならどんな代償も払う覚悟でした。 その夜、葵は十二単衣を身に纏い、皇子の愛を願いました。 翌朝、皇子は葵のもとを訪れ、彼女に求婚しました。葵の願いは叶ったのです。 しかし、幸せも束の間、葵は自分の存在が皆の記憶から消え去っていくのを感じ始めました。 彼女の家族、友人、さらには皇子でさえも、葵を忘れてしま