ヒトラーの後継者は「高潔な武人」だったのか? 【2】カール・デーニッツ元帥(ドイツ海軍) 大木毅 現代史家 さほど第二次世界大戦の歴史に関心がないひとでも、大西洋の護送船団をめぐるドイツ海軍と連合軍護衛部隊の死闘については、映画や小説などで多々描かれているから、そのイメージを思い浮かべるのもたやすいことだろう。この海上交通をめぐる激闘、いわゆる「大西洋の戦い」で、Uボート、潜水艦を主体とする艦隊を指揮して、連合軍に深刻な脅威を与えたのが、ドイツ海軍のカール・デーニッツ元帥である。 潜水艦作戦の名手 デーニッツは、島国イギリスの生命線である商船隊を撃滅し、海上交通を遮断すること、すなわち「通商破壊戦」によって、同国を屈服させようとした。しかも、それは大戦果を挙げ、イギリスは戦争を継続できなくなるのではないかと、連合軍首脳部を憂慮せしめるような事態までもたらしたのであった。 こうした経緯から、