現在、日本の、いや、世界中の大学の学生さんでトーマス・クーンの名前を知っている人はごく僅かでしょう。しかし、ほんの四半世紀も遡れば、事情は全く別でした。2017年、私は『トーマス・クーン解体新書』という電子本を出版しましたので、この拙著の序章から少し引用します: ********** 1962年にシカゴ大学から出版されたトーマス・クーン著『科学革命の構造』は、20世紀後半で最も広く読まれ、引用された学術書である。そのあたりの事情を述べた著者クーン自身の言葉が自著『The Road Since Structure』(2000年出版。今後、RSSと略記)の中にある。 「私はよく言ったものだが、自然科学か数学の分野で大学を卒業するのなら、『科学革命の構造』を読まないままで学士号を取得することもままあるだろう。が、そのほかの分野で大学を卒業するのであれば、如何なる分野でも、少なくとも一度はこの本を