日韓協定においては、国内法的な私人(個人)の請求権まで、条約で消滅させるわけではないと先に述べました。 これに対し、サンフランシスコ平和条約が規定する請求権の放棄は、請求権を実体的に消滅させることを意味しないが、請求権に基づく民事裁判上の権利行使をできなくするという、2007年4月27日最高裁判決の「サンフランシスコ平和条約の枠組み」論が主張されることがあります。 この最高裁の「枠組み」の原形は、米国での一連の日本企業による第二次世界大戦中の奴隷・強制労働に対する賠償請求訴訟にあると考えられるので、まずは、米国裁判所の判断からみたいと思います。 米国裁判所の説明が長くなりますので、先を急ぐ読者は「2. 日本の裁判所の判断」からお読み下さい。 1. 米国裁判所の判断 1999年7月に米国カリフォルニア州で、いわゆるヘイデン法*(カリフォルニア州戦時強制労働補償請求時効延長法)が州法として成立