最晩年、視力が急激に低下し、何もできなくなって認知症が急速に進んでしまうまでは、祖母はとても多趣味な人でした。 そしてその趣味がことごとく雅でした。 茶道、華道、謡(うたい)、小鼓、人形作り、懐石料理、寺社仏閣巡り、能・歌舞伎鑑賞、骨董品……。 そう、祖母はとにかく美しいもの、豪華なもの、優雅なもの、伝統的なものが好きだったのです。 当然、ロンドン観光も、そうした祖母の美学に添うものでなくてはなりません。 美しいものが、嫌いな人がいて……? どころではないのです。 美しいものしか許しまへんえ、という過激派ララァのような人なのです。 知っていたつもりで、実のところそれをちゃんと理解できていなかった私は、最初の目的地、大英博物館で途方に暮れる羽目になりました。 重厚な建物こそ大いに気に入ったものの、誰もが興味津々のはずのミイラ部屋も、誰もが見たがるはずのロゼッタ・ストーンも、誰もが呆れるであろ